私の実家近くの某ディスカウントショップでの話です。
以前から私の母は、「あの店のあたり行くのなんか嫌や」と言い続けていましたが、私はその店へ一度も行っていないので、一度だけならと、母に車でそこへ連れてってくれることになりました。
夜。
24時間営業のその店の周辺は、昼間よりも何だか不気味です。
しかし、もっと不気味だったのは、その店の駐車場に入った時でした。
その店は、一階部分が全て駐車場になっており、建物を支えるために幾つもの太い柱が立っているのですが、その中の幾つかに、戦時中の迷彩服やヘルメットをかぶった軍人が、銃を持って、その柱に凭れ掛かりながら、警戒していました。
勿論、現実にそんな人はいません。いたら即刻警察行きです。そんな危ないコスプレしたら、捕まるに決まってます。
私が見たのはそれだけではありません。
駐車場全体の空気の重さ、そして、その店へ続く階段の全てには、隙間なく手首が出てきていて、それぞれが空を掴むかのように手のひらを開いたり閉じたり思い思いに指を動かしていました。
「うわー凄いな。母がこの辺嫌っていうの、当たりだよ。さっきの駐車場の柱には兵隊さん立ってたし、ここの階段隙間なく手首いっぱい湧き出てるよ」
「そうなん?お母さんわからへん」
店内に入ると直ぐ、私の大好きな天然石の店がありました。アクセサリーから原石まで取り扱っていますが、出口近くを占めているため広くはありません。そもそも、そのディスカウントショップ自体迷路のようで、しかも狭く感じる造りになっています。
私は石大好きなので、ずーっとその場に座り込んでいました。
特に目線が離れなかったのが、大きめの水晶クラスターです。水晶の結晶自体は全部細いのですが、何か物凄く気になるのです。
そのうち、母が、
「陽子、早く外行こう。お母さん外出たい」
と、いきなり急かしだしました。私は、
「その前に私、この原石欲しいんやけど」
「あかんて。2万8千もするやん。蛇みたいで気持ち悪いしとにかく出よう出よう」
と、私は、母に腕を掴まれる形で、その店から連れだされてしまいました。
「何よー!あれ欲しかったのに!」
「あんな気持ち悪いのいらんわ。金の無駄にもなるしあの石気持ち悪いと思わんかったん?蛇みたいで気持ち悪いと思ったんよ?」
「なんで?なんで?」
聞き分けの無い状態になった私を、「しばらくドライブしようか」と、母はそのエリアからはなれ、隣の市までに急いで移りました。
私はというと、急に自分が作った、ヘマタイトの本式数珠を取り出し、必死に叫びたいのをこらえていました。
・・・・・・しばらくして私は、やっとその状態から抜け、ほっと息をつきました。
「何であの水晶のクラスターがすごく欲しかったのかわからへん」
すると母は、こう答えたのです。
「あの時の陽子の顔、怖かった。ずっと座り込んでたやろ、あの石の前で。あの石ほんま、蛇でも憑いてるんじゃないかと思うわ。ほんまあんたの顔、別人になってた。あのままほっといたらどうなるかわからへんかったから、急いでいずみを引きずってまであそこ出たんや・・・」
霊感の弱い母でも異変に気づいた、私の変化・・・。
あの時の私の顔、一体どんな表情をしていたのでしょう?
後になって私は、遠隔でその場所を視てみました。
「あそこ、昔から病死した人とか、戦時中亡くなった人たくさん、一箇所に集められて放り集められた場所なんだね。なあ、母、あの辺空襲とかあった?」
「空襲なんて(苦笑)、日本中どこでもやられとるわ」
「そっかぁ・・・。まともに供養されてないヒトが凄くうじゃうじゃしてたから・・・。軍人はともかく、階段から湧き出る無数の手首を視た時点で、帰ればよかったなあ」
いまも、そのいわくつきの土地に建てられているその店は、そこにあります・・・。