『踏切』

 私が三歳の時です。

 当時住んでいたアパートから近い踏切が今でもありますが、ここで(自覚はないですが)事件が起きました。
 
 母の話だと、私は、その当時に遮断機が降りた踏切の真ん中で座り込み、呆然としていたそうです。そして、呼んでも反応しない私は、見ず知らずの男性から危機一髪のところで救われたのです。

 実は、私の記憶では、また違っていました。すでに遮断機が降りていたので、私はそのまま動こうとはしませんでした。
 『遮断機が降りたら、動いてはいけない』と言われていたからです。
 そう…誰かに。
 その声の主は、30代くらいのワンピース姿の女性で、しきりに私を呼び止めるのです。

 『いずみちゃん、遮断機が降りちゃったから動いちゃだめなのよ』

 そんな声が聞こえていながら、私は、私を呼ぶ両親の姿にきょとんとした反応をしていました。私が助けられたのは、そんな時です。

 最近になって私は、あの踏切で自殺した女性はいないか尋ねてみました。というのも、あの記憶の中の女性は、自殺者だと感じたからです。しかも、失恋によるものだと感じました。

 母は知りませんでしたが、母の知人によると、以前、その踏切で踏切に飛び込んで自殺した女性がいたそうです。
 今でもその踏切を渡ることがありますが、今では彼女の存在は感じません。いつの間にか成仏したのか、それとも誰かにくっついていったのか…。

 あなたの近くの踏切は、大丈夫ですか?

※この話は、「いずみ」というハンドルネームで『噂の現場』に掲載されたものです。