父の初盆が過ぎた頃です。
ある夜、私と母は、車でドライブしながら買い物に行っていました。
もちろん、私は免許を持っていないので、母の運転です。
そうして、ある程度用が済み、寄り道に某ローカルスーパーに行きました。
ふと後ろを視ると、先ほどまで後ろの席に座っていた父が、しきりに後ろを振り返り、「あちゃー」という表情をして、座席からすり抜けて駐車場に出てしまいました。
もしかすると、後ろに何かがあるのかも知れないと思った私は、こんなことを母に言いました。
「・・・あ、お父さんが降りた。何か指示でもしてくれるみたいよ」
当時はまだ若干私の霊感に懐疑的だった母が、こう切り返して来ました。
「・・・じゃあ、お前の指示に従うから。お父さんが指示してくれるんやろ?」
「え・・・私(の霊感)を試すの?!」
「まあ・・・試しになるね。どうなっとる?」
「あ・・・・・・バックバックって指示し始めたで」
父は、ゆっくりと片手を何度も自分の方に振り、合図をしました。
と、その手が開き、そのまま平手を何回も押すような格好になったのです。
「あ、止めて止めて!ストップストップ!」
と私が叫ぶと、母は、慌てて車を止めて運転席から降り、車体の後ろの方に向かって歩きました。
「ちょ・・・陽子!陽子、こっちこっち、早う来てみ」
「な、なに?」
「ええから早く!」
何の事だか分からない私は取り敢えず、助手席を出て母の指差す方を見ました。
何と・・・
そこには店のカートが、無造作に置きっ放しにされているではありませんか!
しかも、車体後部スレスレの所です。もうちょっと止めるのが遅ければ、完全にぶつかっていた所でした。
「本当に、お父さん、今でも見守ってくれてるんや・・・」
母は半分涙声でそう言っていました。
反面、私は疑ってかかりました。
「ちょっと待って、サイドミラーとかでもこのカート見えへんかったん?」
母は呆れた表情をして、
「あほか。こんな暗いのに、車体より低いこんなカートが鏡に写るかってーの」
「・・・そりゃ、そうかな・・・」
しかし・・・
こういう、客観的に「見える形で」証明されたのは、これが初めてのような気がします。
普段は見えない形のまま、事が済んでいるのですから・・・